第7回ゲスト:西成活裕氏(東京大学先端科学技術研究センター教授)〜保険と無駄 無駄学で考える保険とは〜

〜第1章〜期間、目的、立場の統一は、無駄定義の前提条件

自覚している“ムダ”、結果的に“むだ”予測不可能な“無駄”、と3つの無駄がある

今井:「渋滞学」(新潮選書)で交通渋滞のみならず、人・企業・自然の中に存在するさまざまな渋滞について私たちに教えてくれた西成教授。特に交通渋滞については、原因はもちろん数々の検証をもとにした目からウロコ!な解消法をわかりやすく説いてくれました。そんな先生が、「渋滞学」同様に尽力されている「無駄学」についてお聞きしたいと思います。そもそも無駄学をはじめられたきっかけは何だったのですか?

西成さん:10年ほど研究を続けていた「渋滞学」を2006年に発表しました。渋滞学の研究をしている際、常に感じていたのは、「渋滞は社会の無駄である」ということ。車が渋滞すると到着が遅れて時間を無駄にしてしまう、また加減速も増加してガソリン消費やCO2排出量も増えて環境にもよくない。さらに企業の生産現場における渋滞とは?というテーマにも取り組むようになり、その考えはますます強くなりました。そんな時、ある偶然から企業のムダどり活動を手掛けている経営コンサルタント会社・PEC産業教育センターの山田日登志氏と知り合いになりました。「ムダどり学会」の初代会長でもある山田氏との出会いで、「社会から無駄をなくしたい!」という志を同じくする仲間が一気に広がり、ともに無駄の定義や解消方法を考える「無駄学」がスタートしたのです。

今井:渋滞は社会の無駄である、その考えが無駄研究へと繋がっていったのですね。さて、Aさんには無駄でも、Bさんには無駄ではない、と無駄自体を定義づけるのは非常に難しいのではないかと思いますが、西成教授がお考えになる無駄の定義は一体なんでしょうか?

西成さん:あるモノやコトを無駄か否か、と言い合いになることは結構ありますよね。事業仕分けはもちろん、身近なところでは夫婦の諍いにも、無駄か否か議論は頻繁に起こります。ではひとつお聞きしましょう。「世の中、無駄なモノはひとつもない」というAさん、そして「世の中、無駄なモノだらけだ」というBさん、この2人の無駄定義が正反対なのはなぜかわかりますか?

今井:難しい質問ですね。しかしAさんは、Bさんよりも長期的にモノを見ている感じがします。

西成さん:その通り!ふたりの期間設定が違うんです。だから無駄定義の前提として、第1に期間設定することが挙げられます。そして第2が目的です。本には天地左右の空いたスペースがありますが、情報量重視ならばその空きは無駄だし、読みやすさを重視するなら空きは必要ですね。目的をどうとるかで無駄か否かが変わる。そして第3が立場です。目的同様に誰の立場で無駄を考えるのかをあわせないとブレてしまいます。すべて英語ではPではじまるので(期間:period、目的:purpose、立場:position)、無駄を定義する前提に「3つのPあり」と提唱しています。

今井:なるほど、それはわかりやすいですね。無駄の前提条件、期間・目的・立場、を統一して共有してこそ、無駄への解決策を探ることができるんですね。また無駄にも種類があるとか?

西成さん:私たちは、平仮名・カタカナ・漢字で無駄を区分しています。1番多いのが、無駄だな…と自分自身が意識している“ムダ”、そして2番目が結果的に無駄を発生させる“むだ”、3番目は自分ではコントロールがしにくい予測不可能な“無駄”。人間は元来、怠惰な生き物、どうしてもラクでムダな方向に引っ張られます。特に企業のムダどりでは、一人一人のムダ意識改善が非常に重要。一人のムダが大きな損失を生みだすことに繋がりますからね。

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西成 活裕さん

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西成 活裕さん
(にしなり かつひろ)

東京大学先端科学技術研究センター教授・NPO法人日本国際ムダどり学会会長

東京大学大学院工学系研究科博士課程修了。専門は数理物理学。さまざまな渋滞を分野横断的に考える「渋滞学」を提唱。そこから「無駄学」へと展開させて、国内外の企業や東京大学のムダどりプロジェクトに深く関わる。「世界一受けたい授業」(日本テレビ系列)をはじめ多くのテレビやラジオ、新聞などメディアでも活躍。「渋滞学」・「無駄学」(ともに新潮社刊)、また「東大人気教授が教える思考体力を鍛える」(あさ出版刊)など著著多数。趣味はオペラを歌うこと、またCD「ムダとりの歌」(小椋桂・作詞作曲)の歌手も務める。

http://park.itc.u-tokyo.ac.jp/tknishi/

著書

今井隆

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今井 隆
(いまい たかし)

ネクスティア生命保険株式会社代表取締役社長。大学卒業後、日本団体生命へ入社。2008年SBIアクサ生命代表取締役副社長を経て、現職。『みなさまへのお約束』のもと、お求め安く、充実した保障内容の保険商品をご提供できるよう、日々奮闘中。趣味はオペラ。現役で合唱団にも所属している。